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エイリアンはサッカーの試合を見るか?『宇宙背景放射「ビッグバン以前」の痕跡を探る/羽澄昌史(集英社新書)』

冥王星が太陽系惑星から外されたかと思えば新たな第9惑星が発見されつつあったり、はやぶさ2も絶賛航行中だったりと、人類のフロンティアに対する欲求は尽きない様子。
一方地上の花粉症患者たちは、火星で生活すればスギ花粉に怯えずにすむのでは無いかしらと思う今日この頃でございます。

今回の実績紹介はそんな人類の飽くなき知的好奇心を刺激する一冊。
宇宙背景放射「ビッグバン以前」の痕跡を探る羽澄昌史集英社新書)』のご紹介。
宇宙背景放射や原始重力波の観測だなんて難解なテーマについて書かれている本ですが、この分野に明るくなくても、序盤からダーッと一気に読んでいける感じです。

『宇宙背景放射「ビッグバン以前」の痕跡を探る/羽澄昌史(集英社新書)』表紙

人類が宇宙の基本原理を理解するという難題も「宇宙人がサッカーの試合をみる場合に、それをキチンと勝ち負けのあるゲームと理解できるのか?」という問題に置き換えて説明したり、他にも「ドッカーン効果」とか、「アメーバが一瞬で銀河になるほどのインフレーション」だとか、楽しい表現で説明してくれるんです。

今回ウエイドでは図版を担当しております。高度な学術分野を少しでもイメージしやすいイラストやグラフになるよう、表現に工夫を加え、世界中を飛び回る著者の先生に研究の合間をぬって確認して頂くような形で進めました。(今話題の重力波にも関連していて、著者さんの研究が成功すれば、将来ノーベル賞をとるかも、なんて図版担当原田くんが言っていました)

一から描き起こす図以外でも、元のカラーデータをただ白黒に直すだけでは見づらい絵になってしまうので、4色カラーの色相の違いがモノクロの明暗の差で置き換わるように、普段あまり使わない技を駆使して変換したりしています。
『宇宙論』という難しくて壮大なテーマを、シンプルに理解することに役立てば幸いです。

『宇宙背景放射「ビッグバン以前」の痕跡を探る/羽澄昌史(集英社新書)』本文

本を読んで思うに、人類が最終的にたどり着こうとしている“宇宙の基本原理”なるものもまた、驚くほどシンプルで天地が入れ替わるほど突拍子もないことかもしれません。

ですので僕たちはノーベル賞は狙えないまでも、今のウチから「金星の戸籍を取得したよ」とか「宇宙はラズベリーの味がするんだ」とか言っておけば、今は電波あつかいされたとしても、「あの人は先見の明があったんだね。」なんて、後から再評価されるかもしれませんね。
500年後くらいに。

実績紹介『カラー図解 セラピストのための解剖生理学の教科書』(ナツメ社)

 みなさんこんにちは!ウエイドの新刊案内のコーナーです。今日ご紹介するのはこちら、ナツメ社様から刊行の『カラー図解 セラピストのための解剖生理学の教科書』です。こちらの本ではページのレイアウトデザインと、イラストの作成を行いました。
『カラー図解 セラピストのための解剖生理学の教科書』(ナツメ社)表紙

 さて、解剖生理学とは、体の器官の形や位置、そしてその働きを学ぶ学問のこと。こちらの本はタイトルからもわかる通り、すでに現役で活躍されるセラピストの方が、解剖生理学を学び直すための参考書です。
 今回の読者はプロの方々ですので、イラストはかなり高度な内容。分厚い医学書や資料とにらめっこしながら、正確な作図を心がけました。
『カラー図解 セラピストのための解剖生理学の教科書』(ナツメ社)本文1
 しかしながら、セラピストとは若い女性が数多く活躍している職業。当然本書はそういった年齢層の女性をターゲットとしています。
ですので人体や臓器のイラストも医学書ほど生々しくならないよう注意しつつ、分かりやすいようデフォルメを行っていきました。
もちろん、デフォルメのしすぎで重要な部分まで省略してしまわないよう注意を払っています。
色使いも明るいイメージで統一し、解剖図といっても目に優しい印象に仕上げました。
『カラー図解 セラピストのための解剖生理学の教科書』(ナツメ社)本文2

 また模式図的なイラストの他に、所々に挿入される人物のイラストも制作しました。女性向けの可愛らしさを出しつつも、学術的な雰囲気から外れないよう絵柄の調整を何度も行い、専門的な話の中でも読者の方がなごむようないいアクセントになっていると思います。
『カラー図解 セラピストのための解剖生理学の教科書』(ナツメ社)本文3
 DTPにおいても、元になるフォーマットに対してあちこちアレンジを行い、イラスト、デザインと両面で制作のお手伝いをさせていただきました。

 ちなみにこちらの本、合計で280ページ近くもあり、制作したイラストの点数は実に膨大。しかし私どもウエイドはスタッフ10人(2015年12月現在)と比較的大所帯ですので、このようにボリュームのある本でも高いクオリティを維持することが可能なのです。

 そんなウエイドの実力がぎっしり詰まった『カラー図解 セラピストのための解剖生理学の教科書』は全国の書店にて好評発売中!お見かけの際はぜひ手に取ってご覧下さい。

歴史×数学コラボレーション

今回はウエイドが日本語版の図版作成・調整と本文のDTPを担当させて頂きました、この豪華な表紙のハードカバー本、
国家興亡の方程式 歴史に対する数学的アプローチ』(ピーター・ターチン著、水原文訳)のご紹介です。
(あの勝間和代さんを見いだした事でも有名な、ディスカヴァー・トゥエンティワン様より発売中!)
『国家興亡の方程式』(ピーター・ターチン著、水原文訳、Discover21)表紙
タイトル通り、今回は歴史の話だけでなく数式が大挙して登場します。
普段このブログで歴史の書籍を多く紹介するので、歴史好きなウエイドのイメージをお持ちの方も多い事でしょうが、実は理数系が得意なスタッフもいるのです。
そこで、DTPは歴史好き、グラフ・図版は数学好きの人間が担当するという、異色タッグチームで製作にあたりました。
『国家興亡の方程式』(ピーター・ターチン著、水原文訳、Discover21)本文
本書は、領土の面積、人口、集団の団結力などなど、国家の盛衰に影響する要因を考察してモデル化・数値化して数式にして、実際の歴史と比較することで、仮説を検証し、より高精度で国家の興亡を説明できる数式を探求していきます。
人類の生きてきた過程である“歴史”という分野を、自然科学の手法で理解する事で、将来は天気予報のように、人類の未来の事まで計算で予測できるかもしれません。
この試みは生態学・進化生物学、人類学、数学を研究する著者のものすごい功績なのだそうです。

国家の興亡の歴史が、地理的条件や民族的な団結力や資源力などを数値化することで説明できるとしたら、政治家の手腕などの個人の力とは関係なく国は栄えたり滅んだりするのでしょうか。高校では習わない数式が出てくるためハードルは高めですが、興味深い研究です。

日が沈むと肌寒く感じる日も増えてきて、暦の上ではもう秋です。読書の秋なのです。
そんな季節に向けて、少し読み応えのある本を手に取ってみるのも良いものですよ。

※ちなみに歴史といえば、WADE初の自社出版『原田君にもわかる!日本史』はAmazon、紀伊国屋他、主要書店で注文できます!通販サイトも運営中です!
http://wade-japan.com/shop/)歴史入門者の方はこちらもどうぞ。

※2015/9/24 数式の難易度に関する表現を修正しました。

実績紹介:『図解雑学 失敗学』(畑村洋太郎著、ナツメ社)

みなさんこんにちは!ウエイドの新刊案内のコーナーです。
今日ご紹介するのはこちら。ナツメ社様から刊行の『最新図解 失敗学』です。
『最新図解 失敗学』(畑村洋太郎著、ナツメ社)表紙
本書は2006年に出版された『図解雑学 失敗学』に、福島第一原発事故の章を新たに追加した増補改訂版となります。今回ウエイドは、表紙イラストと、追加された章の図版トレースを担当させて頂きました。

さて、「失敗学」とは何かと言いますと、著者である畑村洋太郎教授が、『失敗学のすすめ』などで提唱された学問で、過去の失敗について研究し、原因の究明と教訓の継承を目的としています。
「○○学」なんて言うと、一般人には難しくて理解できないのでは?とお思いの方もいるかもしれません。しかし、本書はより多くの方に失敗の歴史を共有してもらうことがテーマで、内容もなるべくわかりやすく書かれています。
「良い失敗、悪い失敗」といった失敗学の基礎知識や、実際に起きた過去の失敗例など、2ページごとに細かくテーマが区切られ、それぞれ平易な解説と写真・イラストによる図解が付いてきます。失敗学とは何か、失敗から学び活かす方法などが、視覚的にすんなりと理解できる構成となっています。

とくに今回追加された福島の原発事故に関する章は、複雑な事故の過程を一つ一つ追い、その中で起きた数々の失敗について簡潔かつ具体的に解説されています。現在福島原発事故については、多くの意見が飛び交い、その情報量に混乱してしまう人も多いかと思います。そんな方はぜひこの本で福島原発事故の基礎知識を身につけてみてはいかがでしょうか。

さて、図版の制作で心がけたことというと、やはりテイストの統一感にあります。ウエイドが担当したのは後半の増補部分のみ、もし元々にあったイラストと感じが違うと、ちぐはぐした印象になってしまいます。イラストのわかりやすさはもちろん、過去のイラストとの整合性にも気をつけながら制作しました。
『最新図解 失敗学』(畑村洋太郎著、ナツメ社)既存ページ
『最新図解 失敗学』(畑村洋太郎著、ナツメ社)増補ページ
新しい本をイチから作るというお仕事だけでなく、ウエイドは他のデザイン事務所さんが作られたものに合わせて新しいページを追加したり、アレンジしたりすることも得意としています。
もし、かつて出した本を、最新情報に合わせて改訂したいという方がいらっしゃいましたら、ぜひウエイドにお声かけください。
最新図解 失敗学』は全国書店にて好評発売中です!

高学歴なアノ人は、こんなことを考えてる。

高学歴なのになぜ人とうまくいかないのか加藤俊徳(著)が、PHP研究所様より発売中です。
今回は帯に使用されている脳のイラスト作成を担当しております。
『高学歴なのになぜ人とうまくいかないのか』 (PHP新書)表紙
普段ウエイドでは医療系・スポーツ系の詳細な骨格や筋肉や内臓の図も多く手がけていますが(つい先日も人体図祭りでした!)、シンプルな脳のイラストからも滲み出る、人体図製作における研鑽も感じ取って頂けたら嬉しいです。

本書では脳のMRI診断・発達脳化学の専門家が、「高学歴な人がなぜ社会では優秀であるとは限らないのか、天才と言われる人はどのような脳構造をしているのか、自分から動く人は30歳を超えても脳は発達し続ける、健全な脳は新しい刺激を求めつづける…」などを解説しています。

タイトルから察するに、ご自分がそうでなくとも学校や職場に、「高学歴でイヤな奴」がいて、人間関係にお困りの方にオススメの本のように思えますが、それだけではなく、高齢化社会に向けての認知症対策など、脳の機能を活性化させるメカニズムなどについても解説されていて、老後の生活にぼんやりとした不安がある方のためにもなる本です。

脳にとっては、毎日少しずつ新しい事に挑戦して、ワクワクした気持ちで過ごす事が大切みたいですから、
いつもは新書を読まないという方も、この本で脳に新しい刺激を与えてみてはいかがでしょうか?
帯のカラフルに区画分けされた脳のイラストが目印ですよ!

実績紹介『トリック立体 キットBOOK』杉原厚吉著(永岡書店)

『トリック立体 キットBOOK』杉原厚吉著(永岡書店)表紙
トリック立体 キットBOOK杉原厚吉著(永岡書店
パッと見は違和感がないのに、よくよく見ると実際にはあり得ない、そんな立体を描いた「だまし絵」を一度は見たことがあると思います。エッシャーのイラストはよくジグソーパズルやポスターにもなっています。
そんなだまし絵が、実は実現可能だった、そして誰でも組み立てることができるのが、このキットBOOKです。
著者の杉原先生は、人工知能がカメラに写った映像を立体化どうか判断するプログラムの研究中に、あり得ないはずの絵を見せても人工知能があり得ると判定することから、トリック立体が実現可能なことを発見されたのだそうです。


届いた本から一つ組み立てて、動画を撮影してみました。
この不思議体験をぜひ味わってみて下さい。

『トリック立体 キットBOOK』杉原厚吉著(永岡書店)イラスト
WADEは錯覚の説明図やキャラクターイラストを担当しました。

『トリック立体 キットBOOK』杉原厚吉著(永岡書店)組み立て図
組み立て図は製品が無いまま作業せねばならず、苦労しました。

大人も楽しめる、トリック立体の世界、冬休みに挑戦してみてはいかがでしょうか?

実績紹介 高校教科書『新版化学』(実教出版)図版

高校教科書『新版化学』(実教出版)表紙
高校教科書『新版化学』(実教出版)
多数の図版を担当させていただきました。
といっても、メインの作業をしていたのは平成23年前半なので、前職から引き続いての仕事です。作成してから実際に学校で使われるまで2年以上もかかります。一般書ではほとんど考えられない位、時間をかけ、たくさんの先生方の意見を取り入れて、じっくり作られているのです。

高校教科書『新版化学』(実教出版)図版 高校教科書『新版化学』(実教出版)図版 高校教科書『新版化学』(実教出版)図版
最近の主要教科の教科書は、フルカラーが基本で、図や写真も豊富でビックリします。
特に気体や液体の粒子を模式的に描く図で工夫を凝らしました。
目に見えない、奥深い世界ですが、自分の現役時代に解りにくかったこと、勘違いしたことを思い出し、少しでも誤解を減らせるようにしました。

授業で補われることが前提なので、教科書を読むだけで全てを理解するのは困難ですが、とてもとても多くの要素が凝縮されており、一言一言、一図一図に意味と思いが込められています。図だけでなく、本文もです。

一般書店では買えないものですが、思い入れの強い仕事として紹介させていただきました。