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ウエイド、岩波新書に地形図デビュー!

町の本屋さんに必ずコーナーがあって、字が小さくて頭の良さそうな本が並んでいる…それが私の岩波新書のイメージです。
夏目漱石の『こゝろ』を最初に刊行した出版社としても有名です。

今までなかなかご縁のなかった岩波書店に、ついにお仕事で関わることができました。うれしい!
その本がこちら!
一茶の相続争い 北国街道柏原宿訴訟始末』(高橋敏著、岩波書店
『一茶の相続争い 北国街道柏原宿訴訟始末』(高橋敏 著、岩波新書)
帯のキャッチコピーが強烈です。

タイトルどおり、小林一茶の遺産相続争いを中心とする豊富な史料を読み解いて、知られざる素顔に迫っています。
驚くほど多彩な史料にあたりつつ、一茶と一茶に関わる人々の心理を深く洞察した内容で、ついつい先に読み進んでしまいます。

現代の相続争いにも通じる、大俳人一茶の知られざる相続争い、興味を持った方はぜひ店頭でご覧ください。

さて、ウエイドが担当したのは、巻頭の地図です。
『一茶の相続争い 北国街道柏原宿訴訟始末』(高橋敏 著、岩波新書)地図
一茶の故郷である柏原村の立地を説明した地図で、同村の立地条件を見ながら本文を読むと、より理解が深まります。

地形図作成にはカシミール3Dを使用し、モノクロ印刷用に設定を追い込んであります。
3D地形図はこういった歴史に関する本との相性がとても良いです。
その地域の特色が、直感的に伝わります。
地形図を使いたい、と思ったら、ぜひウエイドにお声かけください!

3D地形図サンプル:愛知県岡崎市・岡崎城

ウエイドで引き続き力を入れている、3D地形図のサンプルを作成してみました。
前回は担当者の地元、愛知県豊橋市の吉田城趾でした。
東三河の代表的なお城の次は、西三河の中心をというわけで、今回は岡崎城です。
徳川家康の出生地でもあり、日本100名城にも選ばれていたり、国内最長の連続する石垣が確認されたりと、話題豊富なお城です。

愛知県岡崎市・岡崎城趾の3D地形図
カシミール3Dにて作成、Adobe Illustratorにて調整

東海道(≒国道1号)と矢作川が交差する要衝の、台地の突端に位置しています。
北東部には山脈も見えているように、吉田城よりは起伏のある地域です。

岡崎城の西側を流れる伊賀川は、台地の端の高い方を流れていて不自然な感じがしませんか。
調べてみると、伊賀川で度々起こる氾濫に対処するために、1912年(明治45年)に改修工事を行って、岡崎城の外堀を通って乙川(菅生川)に合流するようにしたのだとか。
大雨の時に乙川からの逆流を防ぐには、より高い位置から流入するのが効果的との判断でしょう。

利根川が有名ですが、水害対策などのために、流路を変更された川って結構あるのですね。

今度岡崎に行く時には、この地図を思い出して地形を眺めてみたいと思います。

おっと、楽しく作成しただけで終わってはいけませんっ。…コホン!
ウエイドでは美しい色分けの3D地形図を現在売出し中です。
複数のアプリを駆使した、美しく見やすい地形図で、紙面を彩ってみませんか。

ぜひお気軽にお問い合わせください!

地味でおなじみの【応仁の乱】を華やかにデザイン!

日本史業界では、今【応仁の乱】ブームが来ているのはご存知ですか?
中公新書の『応仁の乱』が8月現在40万部突破の異例のヒットを記録していて、著者の呉座勇一さんはNHK「英雄たちの選択スペシャル」に登場するなど大活躍中。
これをきっかけに応仁の乱に関する書籍やムックが続々と発売されています。

この波は、歴史書籍のデザインや図版作成を多く手がけているウエイドにも当然やってきました。

それがこちら『応仁の乱 下剋上への道英和ムック)』でございます。
かみゆ歴史編集部様よりご依頼頂きました。

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そもそも【応仁の乱】とは?
「教科書で名前は習ったけれど中身はよくわからない…。」という感想がほとんどだと思います。
「戦国時代前夜」という位置づけですが、特に有名武将が登場する訳でもなくダラダラと約11年も続いた内乱なので、印象が薄いのも仕方ないかもしれませんね。

この度のブームもこの「スター不在」「だらだら続く」という印象の薄さを、逆手にとって火がついた経緯があるようです。弱点を、逆転の発想で魅力に変える、広告の力って偉大ですね。

しかし、この「印象の薄さ」は紙面制作の面では厄介です。群雄割拠の戦国時代に比べて、肖像画が残っている武将は少なく、主要な史跡もほとんど残っていないので、ページを演出するデザイン要素としての絵や写真が足りず、普通に作ると乱と同じく地味〜になってしまうのです。

この点を補うべく、ウエイドのデザインチームも知恵を絞りました。紙面のデザインでは各章ごとに変化をつけたり、背景の素材や装飾に工夫を凝らす等して、バラエティー豊かな仕上がりになっております。

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また登場するマイナー武将達の裏切りに次ぐ裏切り、あまつさえ家族親戚の間柄でも争う始末なので、相関図や勢力分布図も非常に複雑です。
どうやっても混み合ってしまう図版を、いかに見やすく美しくまとめるか。それが図版チームの腕の見せ所でした。

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歴史物を多く手がけるウエイドでも【応仁の乱】を扱う機会は少なく、各自勉強しながらの作業でしたが、ページによっては原稿や資料をしっかり読み込んで、既存の類書には無かった工夫を加えた分かりやすい図を提案できたと自負しています。
装丁から本文デザイン、DTPに図版、平面・3D地図制作まで、一冊まるっと制作しておりますので、ぜひ実際に書籍を手にとって見て頂ければと思います。

3D地形図サンプル:愛知県豊橋市街・吉田城趾

現在ウエイドで力を入れている、3D地形図のサンプルを作成してみました。
担当者の地元、愛知県豊橋市街の高低差を色分け強調してあります。

愛知県豊橋市街・吉田城趾の3D地形図
カシミール3Dにて作成、Adobe Illustratorにて調整

低→中→高
緑→黄→赤
となっていますが、範囲内に山らしい山はない非常に平坦な地形です。
色分けしてみると、東海道(≒国道1号)が豊川と交差する交通の要衝に位置する吉田城が、平地ながらも少しでも守りやすく、洪水にも強い台地の範囲で、豊川に最も接近する位置を選んで建てられた様子が判ります。
堀や石垣の跡らしき凹凸も、この色分けだと感じ取れるのではないでしょうか。

作成してみて気が付いたのは、牟呂用水が高い位置を流れていること。
駅前の水上ビルは川沿いに建てられていると思っていたのですが、台地上を流れていて、川ではなく人工の水路だと見て取れます。
「牟呂用水」という名前からも明らかなのですが、地理に疎い私は漠然と川だと思っておりました。

このように、3D地形図を細かく色分けしてみると、平野部の地形にも様々な歴史の痕跡が浮かび上がってきます。

3D地形図を使った本作りや記事作りをお考えの方、お気軽にご相談ください!

ご近所から架空の島まで、地図製作はウエイドにおまかせ!

昔から「架空の地図」というものが好きでした。
ファンタジー小説の巻頭や、ゲームの攻略本なんかについてくるやつですね。
全く未知の世界に広がる架空の国や街、それを結ぶ航路や街道・・・。
それらは地図の上ではほんの小さな点や線であっても、読者の心を想像の世界へと駆り立ててくれます。

私はそういった地図だと実測的なものが好きで、特に『ゲド戦記』の「多島海」の地図はマイフェイバリット架空地図です。
他に『氷と炎の歌』や『守り人』シリーズもお気に入り。

実は先日、架空の地図を描く仕事をしたのです。
それがこちら、光文社さんから刊行のハニヤ・ヤナギハラ著、山田美明訳『森の人々』です。

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1950年、ミクロネシアの孤島〈イヴ・イヴ島〉に調査団が上陸する。
その中の免疫学者ペリーナは、島の住人たちと彼らが食すカメについて調査するうち驚くべき発見をする・・・。

というのがおおよそのストーリー。
無論この話はフィクションで、島も実在しません。
しかしこの小説がユニークなのは、徹底的にノンフィクションの体裁をとっていること。

本書は主人公の学者の自伝という形を取っていますが、本の冒頭には新聞記事(架空)が引用され、自伝の編集者(これも架空)の手によって序文と脚注まで挿入されます。
何も知らずに手渡されたら、本当にあったことだと勘違いしてしまうかもしれません。

ミクロネシアにある架空の島、そこに棲む生物の生態に迫るノンフィクション仕立ての本というと、シュトゥンプケの『鼻行類』を連想しますね。
ほかにも登場人物の一人の名前がラヴクラフトの小説から引用(多分)されていて、『インスマウスの影』にも南洋に暮らす先住民が・・・。おっと話が逸れました。

今回ウエイドはこの物語の舞台となる〈ウ・イヴ諸島〉の地図を制作いたしました。
さて、この小説の重要な要素がノンフィクションかのようなつくり。
島を取り巻く海岸線や、広がる尾根などはなるべく細かく、真に迫った感じにリアリティを大切に仕上げました。

原書の方はペンとインクで描かれていますが、今回の日本語版ではデジタルで制作し、よりノンフィクション感が強まっていると思います。

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というわけで、私もこの『森の人々』を楽しく読み進めているところです。
自伝仕立ての進行なのでまだ主人公の幼少期なのですが、冒頭で彼が解き明かしたイヴ・イヴ島の秘密、そして彼が小児虐待で服役中であることが語られるので、常に不気味な雰囲気が漂います。
主人公の回想によって話が進む点や、名状しがたい正体不明の恐怖感は、やはりラヴクラフトの影響が・・・

歴史散歩に行きたくなる!ウエイドのブックデザインと地図

さっそくですが今回の業務実績紹介は、
洋泉社様より発売中の『地図と地形で楽しむ 横浜歴史散歩』です。

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江戸末期までは誰も知らない「寒村」だった横浜が、
なぜ、開港から150年余で370万人以上が暮らす「日本No.2」の巨大都市になれたのか?
他に横浜に残る地名の由来や、中華街はなぜ海岸線に対してナナメなのか?
など、“知っているようで知らない”ナゾを地図地形から読み解きます。
埋め立て地で平らな印象の横浜にも、実は地形にまつわる秘密があって新鮮でした。

……そうです。またまた“地形”でございます。

当ブログを熱心に読んでくださっている方でしたらご存知の事と思いますが、ウエイドの手がけた地形歴史本の実績、かなり充実してます!

本当に流行ってますよね。
もはや「地形歴史本」はひとつのジャンルになったのやも?

☆森田一義 森田一義アワー バンザーイ☆ でございます。

ウエイドでは装丁から本文デザインに地図イラストまで、まるっと一冊担当しております。
得意の地図制作に関しては、当初依頼のあった地図のフォーマットは数パターンだったのですが、「もっと分かりやすい的確な表現方法があるのでは?」ということで、こちらから目的別に様々な種類の地図フォーマットを提案させて頂きました。

同じ横浜の地図や地形を説明するのに、これだけの種類の表現方法があるのかと見比べて頂けると嬉しいかぎりです。
(欲を申せば、もっとたくさん地図を描きたかったです… ʘ言ʘ)

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さらに、実は本書のシリーズ化計画が進行中だとか…?
横浜に続いて、自分の住んでいる街に隠された身近な歴史ロマンをひも解とけるようになるかも…と今から楽しみです!
(あぁ、そしてもっと地図が描ける… ´∀`〃)

あと、本の中では参考資料的な要素かも知れませんが、日本画を勉強している僕個人的には、時々出てくる当時の横浜の風景を描いた浮世絵も見所でした。

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この頃の浮世絵は、幕末・明治期ですから西洋の画法なんかも少しずつ入ってきている時期で、構図や場面演出も新しくて見応えありますし、もちろん日本人気質で細かい所まで描き込んでいるので、当時の町並みや人の仕草を眺めるのも楽しいですよね。

話がそれました。

我々ウエイドも横浜開港当時の絵師のように、現地の雰囲気が伝わるブックデザインや地図制作によって、皆さんが実際に現地に行ってみたくなるような書籍を作っていきたいと思います。
「こんな本を作りたい!」というアイデアのある方は、まずご相談からでもお声がけ頂けると幸いです。

繊細な3Dマップで、人気の「お城本」の読み応えをアップ!

熊本地震の影響で立入り制限が続く熊本城の行幸坂(みゆきざか)ですが、お花見の季節に合わせて3月25・26日と4月1・2日に規制を一部解除したそうです。
いかれた方いらっしゃいますか?

熊本城の崩れかかった姿はなんとも痛々しいですが、その他のお城でも完全とはいかなくとも震災や戦火を乗り越えてまだ姿を残しているのって凄いですよねぇ。
当時の大工さん達のキッチリしたお仕事のたまものです。

せっかく桜の季節ですし、お花見にかこつけてちょっと遠くのお城まで足を伸ばして、匠の技巧にうなってみるのも面白いかもしれません。
という訳で、今回はお城巡りのガイドブックにおすすめな本を、ドドドドンと4冊イッキにご紹介します。

まずはこちら、装丁と本文デザインに図版、DTPまで一冊丸ごと関わっております『よくわかる日本の城 日本城郭検定公式参考書』(学研プラス
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それから、
別冊歴史REAL「山城歩き」徹底ガイド』(洋泉社
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別冊歴史REAL「名城歩き」徹底ガイド』(洋泉社
Ph03_yosensha_meijou

戦国の名城』(スタンダーズ株式会社
Ph04_standards_sengoku-meijou

の3冊では、それぞれレイアウト、地図を中心とした図版、DTPなどで制作に携わっています。
いずれも、ウエイドと歴史関係のお仕事で長いお付き合いのある、かみゆ歴史編集部さんからご依頼頂きました。(→過去の業務実績

4冊ともお城をあつかった本ですが、違った個性の本が完成しました。
見比べてみても面白いはず。

まとめて眺めていると気がつくのが、「地形という観点から歴史を眺めるというのがブームになっている」と言う事ですね。
タモリさんの影響でしょうか?

この波に乗って… という訳ではないのですが、歴史書籍を多く手がけるウエイドでも地形の分かる3Dマップ制作の研究が進んでいます。

TV番組でもよく見かける<Google Earth>と、地形ソフトとして定評のある<カシミール3D>など、複数のアプリケーションを組み合わせて使用しています。
いずれもフリーソフトなので、使った事があると言う方もいるかも知れませんね。

簡単に立体的な地形図が作成できて面白いのですが、出版物に掲載となると、美しく、誰が見ても判りやすいようしっかり調整されている必要があります。
そのため、ウエイドではただソフトを起動してデフォルト設定で地図画像を書き出すという事はほとんどしません。(もちろんご予算次第ですが… *⌒―⌒*)

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紹介する地形に合わせて、3D地形マップの標高エフェクトや色設定を繊細に検討したり、PhotoshopやIllustratorでアプリの機能を補って、地形をより魅力的に判りやすく見せるよう、日々研究工夫を続けています。

お城を建てる大工さんと一緒です。
どんな道具でも使う人の技術や心の込め方次第で仕上がりは大きく違ってくるのですね。
ぜひ他の本と見比べてみてください。

こんな風に、皆さんの「こんな感じの本作れないかな?」といった漠然としたアイデアにも、今まで培ってきた歴史関係のデザイン経験や地図製作のノウハウ等を活かして、色々な実現方法をご提案できます。

よりよい本を一緒に作っていけたらと思っておりますので、まずは雑談からでも、お気軽にウエイドへお声かけを!