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人気作家の書籍を彩る、ウエイドの手芸イラスト

私の祖父の趣味の一つにボタニカルアートがありました。
花びらの模様や葉に広がるシミ、葉脈の一本一本まで忠実に描いた絵が家の廊下に飾ってあって、筆致の細かさにビックリしたものですが、植物には動物とはまた違う神秘的な美しさがあると思います。

その植物の美しさを絵ではなく「編みもの」で再現する作家さんがいらっしゃいます。
それが“ルナヘヴンリィ”の作家名で活躍される中里華奈先生です。その作品はかぎ針で編んだ草花の小さなアクセサリー。
指先に乗るような本当に小さなものですが、花びらの形や葉の曲線まで正確に再現されていて、その精巧さには驚くばかりです。
イベントで販売される作品は、早々に完売してしまう人気だとか。

そのルナヘヴンリィこと中里先生が、満を持してついに技法書を発表されました。
それがこちら河出書房新社様から発売の『かぎ針で編むルナヘヴンリィの小さなお花のアクセサリー』です。

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この度ウエイドは、編み方基礎図と記号図を制作いたしました。

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写真を見ればお分かりになると思いますが、中里先生の作品はとても精密なものばかり。
しかし基礎図で編み方を押さえて、手順を一歩一歩踏んでいけば誰でもこんな素敵な作品を作ることが可能です。

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基礎図作成にあたっては、実際に編んでみて、編みものの基礎を再確認しつつ作業を進めました。
さらに、今回の本は中里先生のルナヘヴンリィシリーズ第一作となる本。
普段から培った編みもののノウハウを生かしつつ、初めての方にも作品を完成させてほしいとの先生の思いを受けて、一度ウエイドも初心に返って、見やすく分かりやすい図を心がけました。

そして今回ご紹介したい本がもう一冊。
こちらも河出書房新社様の『クロスステッチで楽しむきもの模様』です。

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着物の模様を生地に染めるために使った「伊勢型紙」。
重要無形文化財にも登録されている日本の伝統模様をクロスステッチで再現したのが本書で、ウエイドはステッチの図案トレースと作り方イラストの作図を担当いたしました。

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クロスステッチで楽しむ和の模様』でデビューし、刺しゅう業界にセンセーションを巻き起こした遠藤佐絵子先生の、ファン待望の第3弾です。
デビュー作、第2弾の『クロスステッチで楽しむレース模様』に引き続いてのご依頼に、感謝一杯で作業にあたりました。

前回の本とは作業担当者が違うのですが、テイストに差異が生じないよう、情報共有には気をつけました。

刺しゅうの図案集としてだけでなく、色の和名や伝統の図案の小事典としても役立ちそうな一冊。
普段使いの小物に、ワンポイントで和の図案を刺しゅうしたら、世界に一つだけの宝物になって、日常に彩りを与えてくれそうです。

今回が初めての先生と、いつもご贔屓にしてくださっている先生。
お二人の仕事を同時期に手掛けましたが、仕事に対する姿勢を改めて見つめ直す機会になったと思います。

手芸書大手日本ヴォーグ社5冊紹介!ヒットの影にWADEあり!?

気づけばもう年の瀬ですね。
そう、もうすぐ新年です。

そんな時期にこじつける訳ではないですが、今回の業務実績紹介は豪華詰め合わせ福袋。
日本ヴォーグ社さん特集と題しまして、『手作り手帖』、『ホームソーイング部門テキスト』、『基礎からはじめる ペーパークイリング』(多香山みれ 著)、『毎日持ちたいパッチワークバッグ 楽しく作ってね。』(秋田景子 著)、『モールの動物達』(国本雅之 著)の5冊を、どーんとまとめてご紹介!

まずは各本について軽くご説明を、(本当は一つ一つ丁寧にご紹介したかったのですが…。)

☆『手作り手帖は暮らしを豊かに美しく彩る‟手仕事”を毎号特集していて、上質な手芸作品がぎっしり詰った雑誌です。少し上級者向けかもしれません。

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☆『ホームソーイング部門テキスト』ヴォーグ学園で資格を取得して手芸の先生を目指す方のためのテキストです。
この本でしっかり勉強して将来有名になったあかつきには、ぜひウエイドに手芸本制作のご依頼を…!

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☆『基礎からはじめる ペーパークイリングはカラフルなテープをくるくる巻いてパーツを作り模様を描く、ペーパークイリングの作り方本。
立体のオブジェの他に、バースデーやクリスマスに送るカードも作れます。
初心者でも楽しめる魅力的な一冊です。

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☆『毎日持ちたいパッチワークバッグ 楽しく作ってね。
この本で紹介しているバッグは、本体やまちをパーツごとに作り巻きかがって仕立てるので、仕立て方がかんたんです。
キレイに仕上げるコツや、バッグ作りを得意とする著者さんの魅力がたっぷり詰っていて内容的にも盛りだくさんです。

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☆『モールの動物達は、ふわふわのモールを曲げたりねじったりして、3~5cmほどの小さな動物が作れます。でき上がった動物たちは、ちょこんと飾るととってもキュート。
猫に柴犬、ペンギンやパンダなどなど、作品は細かいですが作り方を丁寧に解説しているので安心です。

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担当した作業はそれぞれで多岐に渡りますが、主に作り方イラストのトレースやレイアウトデザイン、DTPなどです。

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日本ヴォーグ社さんとは長いおつきあいをさせて頂いているので、イラストや型紙のトレースをする際には、担当の編集者さんからの「前回はこうだったので、今回はもっとこうしたい。」のような細かいフォーマットの修正に対応しますし、ときには新しいフォーマットのご提案などもいたします。

また、今回のようにいくつかのお仕事を同時に頂く事もしばしば。
実を申せば、今回ブログでご紹介したい本が重なったのも、別に紹介するのをもったいぶっていた訳ではなく、たまたま発行時期が近かったので、それならまとめてご紹介してしまおうというわけです。

ウエイド手芸制作部はますます層が厚くなって、手芸関係のお仕事をいくつも同時にお受けする事が可能になっているという事なんですね。

という訳で、みなさまも今後ともどうか遠慮などなさらずに。
どしどしお仕事のご依頼お待ちしております。

リボン刺繍で暑さをのりきる…!?

まだまだ暑さが続く日々ですね。
暑さも何かに集中したり熱中したりしてるとあまり体感しなくなるような気がするのですが、みなさんはどうでしょうか?

刺繍とか…とても集中しちゃいますよね。
「刺繍やったことがないのだけれど、簡単にできるの…?」
「刺繍って細かくて仕上がりそうにない…」
そんなときに、リボン刺繍はいかがでしょうか?
リボンを使ってステッチしていく刺繍のことです!
『ちいさなリボン刺繍』(エクスナレッジ)基礎ページ

普通の刺繍は刺繍糸を使い緻密にステッチしていきますが、
リボン刺繍はその名のとおり、リボンを糸としてステッチしていく刺繍です。

普通の刺繍に比べると、リボン刺繍はリボンの面を活かしながらステッチしていくので、針を刺す回数が少なく、早く仕上げることができます。
刺繍自体やったことがない、普段あまりやらないという方にもオススメです!
半立体のようなふわっとした仕上がりになるので、作品のアクセントにもいいですね!

そして、そんなリボン刺繍をするときに役立つ一冊が、コチラ!
ちいさなリボン刺繍』(株式会社エクスナレッジ様発行)
『ちいさなリボン刺繍』(エクスナレッジ)表紙
カラーページは、どんなものを刺繍しよう?とながめているだけで想像が膨らむ写真ばかりです。

ウエイドでは作り方ページのトレース・作図とDTPを担当しました。
『ちいさなリボン刺繍』(エクスナレッジ)図案
重なり合う図案の際、区別しやすいように濃淡で色分けをしてわかりやすくしています。
実物大の図案つきなので、仕上がりも想像しやすいのではないでしょうか?

また、基本レッスンのページでは、横方向にグラデーションの入ったリボンを使用して撮影していて、リボンの重なり具合がよく判るよう工夫されています。

学生のころ、自分のすきなイラストをひたすらクロスステッチでおこしていくという授業がありましたが、白と黒のみでパンダを刺繍したので、今思うとすごく地味だったなあと思い出しました。
そのころにこのリボン刺繍を知っていれば、もっとかわいい作品になっていたのだろうな〜。

日本生まれの北欧刺しゅう!?『スウェーデン刺しゅうの図案帖』(グラフィック社)

北欧っていいですよねぇ…。

北欧といえば、サウナにIKEA。
ムーミンにヴァイキング、ライコネンにアホネンと。
みんなが好きなものが色々ありますね。

手芸の分野では“北欧刺しゅう”なんて言うのも有名です。

でも、今回業務実績で紹介させていただく
スウェーデン刺しゅうの図案帖』(五十嵐富美(著)、久家道子(監修)/グラフィック社)に登場するこの「スウェーデン刺しゅう」は、先の曲がった刺しゅう針で二重織りの布の織目をすくって模様をつくる刺しゅうの事ですが、スウェーデンと言いつつも北欧発祥のモノではありません。
『スウェーデン刺しゅうの図案帖』(五十嵐富美(著)、久家道子(監修)/グラフィック社)表紙
実は、日本の手芸作家 久家道子先生が創作発表したモノだったのです!

昭和30~40年代に大ブームになった技法なので、懐かしいと思う方もいるのでは?
これに再びスポットライトを当てようというのが本書です。

ウエイドでは図案パターンのイラストを担当しています。
『スウェーデン刺しゅうの図案帖』(五十嵐富美(著)、久家道子(監修)/グラフィック社)図案
実物は一見すると糸が折り重なって、どこに繋がっているのか見失いかねないので、
イラストを制作する上では見やすさに注意を払いました。

同じ色の糸でも、色の濃淡でどちらがどこに繋がっているか、判るようにしている箇所もあります。
他にも、同じパターンのくり返しの中にも、本を見て作る人が見やすいようにシンプルに美しく見せる工夫がいっぱいあります。

刺しゅう図案や編み図などの規則性のある模様はウエイドの得意分野なのです!

ところで、北欧ではちょうど今頃白夜の時期。
ムーミンやアホネンたちも薄ら明るい夜を過ごしていることでしょう。
なんだか寝不足になったりしそう…。
そんな眠れない夜には、スウェーデン刺しゅうがモッテコイだと思うのですが。

マイナビ手芸書三部作・絶賛公開中!

どーも!どーもどーも!ウエイドスタッフ、イラストレーター関です。
最近、クライアント様から「セキさんのセキってどういう字ですか?」と聞かれる事が多いような気がします。
なるほど、この広い日本、「瀬木」と書くセキさんもいらっしゃるわけで…
そこで漢字でどう書くか説明する必要があるのです。
紙に書いて見せられれば簡単なのですが、そうもいかない状況ってありますでしょ?たとえば電話口とか、口頭でお答えせねばなりますまい。
「関東のカンでセキです」と応えると、「セキの漢字を聞いてるのにカンで応えられても…」と思われるんじゃないかと心配になってしまったり…
「大関琴欧州のゼキでセキです」だとピンと来ないし…
「関根のセキ」だとなんだか悔しいし…「関所のセキ」だと味気ないし…
と、さんざっぱら悩んだあげく、たどり着いた答えがコレ!
「関サバのセキです」
これなら大丈夫なはず!なにより美味しいし!
関サバの旬は過ぎてしまいましたが、年齢的に今が旬の関が満を持してお送りいたしますよー!

今回、ご紹介いたします本はこちら!
マイナビ手芸書三部作
はじめての大人かわいいアクセサリー
これ1冊できちんとわかる 棒針編みの基本BOOK
素朴でかわいいこぎん刺し
の、手芸本3本立てでございます!
ウエイド手芸制作部大活躍!
この3冊、何を隠そうすべてマイナビ出版様からのご依頼なんですね!
ありがたい話じゃありませんか!一ツ橋方面にペコリ!

さてさて、肝心の内容はと申しますと…

——————全ての伝説はここから始まった——————
我々ウエイドとマイナビさまの出逢いの1冊でございます。
『素朴でかわいいこぎん刺し』(米山知歩著、マイナビ出版)
素朴でかわいいこぎん刺し』では図案と作り方図と型紙、一部DTPも。
一番手ですが3冊のなかで一番時間と労力をかけたんじゃないでしょうか(汗
しかし!校了した時の達成感もひとしおでした。

——————作品が可愛いので可愛らしさを意識しつつ、わかりやすく!——————
『はじめての大人かわいいアクセサリー』(マイナビ出版)
はじめての大人かわいいアクセサリー』では配置図とプラバンの型紙とDTPを。
作業者曰く、特に実際のパーツの比率を守りながら図として美しく見せるには並々ならぬ苦労があったそうです。

——————読んでる人がじっくり見てしまうようでは図版として二流
                       作業担当者談———————
『これ1冊できちんとわかる 棒針編みの基本BOOK』(鎌田恵美子著、マイナビ出版)
これ1冊できちんとわかる 棒針編みの基本BOOK』では編み方の基礎のカットを。
特に今回は写真の合間に入り、なおかつ写真では伝わりづらいポイントをわかりやすくするための図版イラストでしたので、読者がストレスなく読み進められるよう努めました。

マイナビ手芸書三部作
テッテレー♪

3冊ともスケジュールが重なっていたんですが、そこは我らが手芸制作部!
豊富な人員によってお互いをカバーし、無事作業を進められたわけですね!
弊社スタッフはほぼ全員が作画トレースできますので、多少スケジュールの厳しいものや、点数の多いものでもマンパワーでもってこなせてしまったりする辺り、普段目に見えない部分ではありますが、そういったところも株式会社ウエイドの強みではあるかと思います。
おっと、だからといっていつもいつも無理めスケジュールな方は…お察し下さいね!ご利用は計画的にっ。
ともかく困ったらまずウエイドさんにご相談を!
電話番号
東京03-6304-2154(月〜金10:00〜19:00 土日祝はお休みです)で
ございます!
今すぐCall me! Call again!でございます!
よろしくお願いいたしまーす!

気難しいけれど、優しい妖精です 『クロスステッチで楽しむ 北欧の妖精トムテ』(ネコ・パブリッシング)

今回はネコ・パブリッシング様より発売中の『クロスステッチで楽しむ 北欧の妖精トムテ』についてご紹介します。
『クロスステッチで楽しむ 北欧の妖精トムテ』表紙
本書は、スウェーデン人デザイナー、ジェリー・ローペ(1919-2005)が1960年代に発表したデザインシリーズ「トムテ」から、ユーモアある愛らしいデザインを、クロスステッチで表現した図案集です。
クロスステッチが好きな方、北欧好きの方にもオススメ。

そもそもこの”トムテ”とは、北欧の民間伝承に登場する小さな妖精で、日本でいうところの座敷童などが該当すると考えてもよいのかもしれません。
気難しいけれど、優しい妖精なんだとか。
北欧の一部地域ではサンタクロースの原型とする説もあって、家々に幸福をもたらします。
近年では、現地の人によってその姿が映像に撮られるなど、去年の某年末オカルト特番でも盛り上がりましたね!

…すみません。脱線しました。

ウエイドでは、ブックデザイン・レイアウトから図案トレース・テクニックイラストまで含めて、一冊まるごと担当させていただきました。
図案はピクセルアートさながら、一見昔の初代スーパーマリオみたいです。マスが細かいので、トレース作業でも正確さが求められます。
どこかで1マスずれが生じてしまうと、後で修正したりチェックし直すのに大変な手間がかかってしまうのです。緊張です。
『クロスステッチで楽しむ 北欧の妖精トムテ』本文
実際に縫い進めていくと、あったか可愛らしいトムテのクロスステッチのできあがりです。

ちなみに、巻末のうれしい特別付録・トムテの刺繍ワッペンにご注目。
『クロスステッチで楽しむ 北欧の妖精トムテ』ワッペン
ちょっと目線を変えていただいて、台紙を見ていただくと、刺繍に合わせた可愛らしい背景イラストが特色インクで印刷されていますが、
この布風テクスチャーが施されたもとの特色画像データを、入校時に印刷用グレースケールデータに置き換えるのにはちょっとした、でもデザイナー熟練の小技が潜んでいます。
そんな製作側の立場で見てみると、ワッペンを飾る縁の下の力持ち的存在の台紙も素敵に見えてきませんか?

その他、オーナメントの作り方なども掲載されているので、クリスマスの飾り付けを手作りで…、なんていうのもなかなか素敵。
北欧の冬は長いですが、文化雑多な日本では、うかうかしている間にすぐにお正月です。
お買い求めの際は、お早めに書店まで。

それは生きる為に生まれた生活の知恵だったのです。『はじめての菱刺し』(倉茂洋美(著)、河出書房新社)

今回は河出書房新社様より出版されております、『はじめての菱刺し』(倉茂洋美 著)のご紹介です。
ウエイドでは刺繍の図案トレースとイラスト作成を担当しております。

『はじめての菱刺し』(倉茂洋美 著、河出書房新社)表紙

そもそも“菱刺し”という言葉にあまりなじみが無い方もおられる事かと思いますので、まずは少し解説から…。

最近話題になっている刺し子(模様刺しゅう)ですが、その中でも青森県南部に伝わる“菱刺し”は北部の津軽地方に伝わる“こぎん刺し”とともに北国の人々が厳しい環境の中で少しでも快適に過ごそうという暮らしの知恵から生まれた刺繍の技法です。

他の刺し子との違いは、菱刺しはタテの織目に対して偶数の目で刺す事です。こぎん刺しはこれを奇数の目で刺します。

菱刺しとこぎん刺しの比較

その誕生は江戸時代まで遡り、1724年(享保9年)の「農家倹約分限令」によって、農民は木綿の着用が禁じられたために、麻布の織物を着て生活していました。
しかし、麻の着物は目が粗く、北国の寒さを防ぐ事はできませんでした。そこで、刺繍を細かくすることで布の密度を増して暖をとろうと工夫して生み出されたのが、この“菱刺し”というわけです。

寒さをから身を守りたい、でも厚着ができない。そんな苦肉の策から生まれた技法ですが、防寒だけではなく、衣服の強度や装飾性を高めることに一役買っている、正に「生活の知恵」は素晴らしいものだと思います。
また単に必要のために作られたにとどまらず、300種類以上とも400種類以上とも言われる多彩な模様が伝わっています。当時の制約の中で、精一杯のおしゃれを楽しみ、技を競い合い、健康・豊作・安全などの願いを込めて刺されていたことがわかります。

今では家々に暖房があって、人々はヒートテックを着て、これからの寒い季節もそこそこ快適に過ごせるので、わざわざ菱刺しで暖をとる必要はないですが、この『はじめての菱刺し 伝統の刺し子を楽しむ図案帖』を見てみると、生活の知恵ウンヌンカンヌンを差し置いて、とっても可愛らしい図案がたくさん載っています。
ブローチやコースターにアレンジされた菱刺し小物たちは、かつての質素倹約精神を感じさせるよりは、むしろオシャレ感を醸し出しています。

『はじめての菱刺し』(倉茂洋美 著、河出書房新社)本文

これからの季節、刺し子を通して北国の女性達が紡いできた伝統の一端に触れて、ほんの少しほっこりした気分になるのもわるくないかもしれませんね。