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もふもふ手触り「動物ぽんぽん」

みなさん、“ポンポン”をご存知でしょうか?
毛糸をぐるぐる巻いて紐でくくり、束になった部分をきると…
ぽんぽん写真
このような毛玉状の玉飾りになります。
ビニールテープでつくられたポンポンを運動会の応援などでみかけたことが
あるのではないでしょうか?

今回は、毛糸でつくったポンポンをベースにして、
かわいらしい動物たちをつくることのできる
動物ぽんぽん』(誠文堂新光社様発行)のご紹介です。
著者は第一回ハンドメイド大賞にて大賞およびアクセサリー賞を受賞されたtrikotriさん。
『動物ぽんぽん』(trikotri著、誠文堂新光社)表紙

先日朝の情報番組で取り上げられたり、
またAmazonのブックランキングでなんと手芸部門全体での1位を獲得するなど
女性を中心に人気を集めています。

ポンポンをつくる際に重宝するのが
クロバーより発売されているポンポンメーカーという器具です。
厚紙を使ってつくることもできますが、より密集したポンポンをつくることができます。

この本はこのポンポンメーカーを使うことを前提としているのですが、この本のように複数の糸を使って模様を作るための図が載っている本はまだ数える程しかなく、統一された表現も確立されていません。
著者様の手描きの作り方図から印刷用のカラー図版を制作するにあたり、どんな図にすればわかりやすいだろう?と、著者様やデザイナー様のご要望を伺いながら試行錯誤を重ねました。
『動物ぽんぽん』(trikotri著、誠文堂新光社)本文とポンポンメーカー

毛糸がたくさん巻かれている様子を表現しつつも、
見づらくならないように線と塗りが自然に馴染む設定にしたり、
手づくりの作品ということで、図版もかたいものにならないよう、
毛糸を巻く位置の目安の線をかっちりした線にせずラフに仕上げるなど、あちこち工夫をこらしてあります。

掲載されている動物たちを眺めているだけでもほっこりした気持ちになりますが、
きっと自分でもつくってみたい!となると思います。
見た目だけでなく、もふもふ・もこもことした手触りにも、とても癒されます。

…実は、私もコッソリと制作を進めていたりします。
現在ベースまで出来ている段階ですが、無事に完成できるといいなあ…

ぜひ、みなさんもこの『動物ぽんぽん』で楽しいぽんぽんライフを!

エイリアンはサッカーの試合を見るか?『宇宙背景放射「ビッグバン以前」の痕跡を探る/羽澄昌史(集英社新書)』

冥王星が太陽系惑星から外されたかと思えば新たな第9惑星が発見されつつあったり、はやぶさ2も絶賛航行中だったりと、人類のフロンティアに対する欲求は尽きない様子。
一方地上の花粉症患者たちは、火星で生活すればスギ花粉に怯えずにすむのでは無いかしらと思う今日この頃でございます。

今回の実績紹介はそんな人類の飽くなき知的好奇心を刺激する一冊。
宇宙背景放射「ビッグバン以前」の痕跡を探る羽澄昌史集英社新書)』のご紹介。
宇宙背景放射や原始重力波の観測だなんて難解なテーマについて書かれている本ですが、この分野に明るくなくても、序盤からダーッと一気に読んでいける感じです。

『宇宙背景放射「ビッグバン以前」の痕跡を探る/羽澄昌史(集英社新書)』表紙

人類が宇宙の基本原理を理解するという難題も「宇宙人がサッカーの試合をみる場合に、それをキチンと勝ち負けのあるゲームと理解できるのか?」という問題に置き換えて説明したり、他にも「ドッカーン効果」とか、「アメーバが一瞬で銀河になるほどのインフレーション」だとか、楽しい表現で説明してくれるんです。

今回ウエイドでは図版を担当しております。高度な学術分野を少しでもイメージしやすいイラストやグラフになるよう、表現に工夫を加え、世界中を飛び回る著者の先生に研究の合間をぬって確認して頂くような形で進めました。(今話題の重力波にも関連していて、著者さんの研究が成功すれば、将来ノーベル賞をとるかも、なんて図版担当原田くんが言っていました)

一から描き起こす図以外でも、元のカラーデータをただ白黒に直すだけでは見づらい絵になってしまうので、4色カラーの色相の違いがモノクロの明暗の差で置き換わるように、普段あまり使わない技を駆使して変換したりしています。
『宇宙論』という難しくて壮大なテーマを、シンプルに理解することに役立てば幸いです。

『宇宙背景放射「ビッグバン以前」の痕跡を探る/羽澄昌史(集英社新書)』本文

本を読んで思うに、人類が最終的にたどり着こうとしている“宇宙の基本原理”なるものもまた、驚くほどシンプルで天地が入れ替わるほど突拍子もないことかもしれません。

ですので僕たちはノーベル賞は狙えないまでも、今のウチから「金星の戸籍を取得したよ」とか「宇宙はラズベリーの味がするんだ」とか言っておけば、今は電波あつかいされたとしても、「あの人は先見の明があったんだね。」なんて、後から再評価されるかもしれませんね。
500年後くらいに。

気難しいけれど、優しい妖精です 『クロスステッチで楽しむ 北欧の妖精トムテ』(ネコ・パブリッシング)

今回はネコ・パブリッシング様より発売中の『クロスステッチで楽しむ 北欧の妖精トムテ』についてご紹介します。
『クロスステッチで楽しむ 北欧の妖精トムテ』表紙
本書は、スウェーデン人デザイナー、ジェリー・ローペ(1919-2005)が1960年代に発表したデザインシリーズ「トムテ」から、ユーモアある愛らしいデザインを、クロスステッチで表現した図案集です。
クロスステッチが好きな方、北欧好きの方にもオススメ。

そもそもこの”トムテ”とは、北欧の民間伝承に登場する小さな妖精で、日本でいうところの座敷童などが該当すると考えてもよいのかもしれません。
気難しいけれど、優しい妖精なんだとか。
北欧の一部地域ではサンタクロースの原型とする説もあって、家々に幸福をもたらします。
近年では、現地の人によってその姿が映像に撮られるなど、去年の某年末オカルト特番でも盛り上がりましたね!

…すみません。脱線しました。

ウエイドでは、ブックデザイン・レイアウトから図案トレース・テクニックイラストまで含めて、一冊まるごと担当させていただきました。
図案はピクセルアートさながら、一見昔の初代スーパーマリオみたいです。マスが細かいので、トレース作業でも正確さが求められます。
どこかで1マスずれが生じてしまうと、後で修正したりチェックし直すのに大変な手間がかかってしまうのです。緊張です。
『クロスステッチで楽しむ 北欧の妖精トムテ』本文
実際に縫い進めていくと、あったか可愛らしいトムテのクロスステッチのできあがりです。

ちなみに、巻末のうれしい特別付録・トムテの刺繍ワッペンにご注目。
『クロスステッチで楽しむ 北欧の妖精トムテ』ワッペン
ちょっと目線を変えていただいて、台紙を見ていただくと、刺繍に合わせた可愛らしい背景イラストが特色インクで印刷されていますが、
この布風テクスチャーが施されたもとの特色画像データを、入校時に印刷用グレースケールデータに置き換えるのにはちょっとした、でもデザイナー熟練の小技が潜んでいます。
そんな製作側の立場で見てみると、ワッペンを飾る縁の下の力持ち的存在の台紙も素敵に見えてきませんか?

その他、オーナメントの作り方なども掲載されているので、クリスマスの飾り付けを手作りで…、なんていうのもなかなか素敵。
北欧の冬は長いですが、文化雑多な日本では、うかうかしている間にすぐにお正月です。
お買い求めの際は、お早めに書店まで。

“大切な人に贈りたくなる”そんな本ができました。

 みなさんこんにちは!ウエイドの新刊案内のコーナーです。今日ご紹介するのはこちら。KADOKAWA様より刊行の『コロリアージュ ジャパン いせ辰 千代紙』です。
『コロリアージュ ジャパン いせ辰 千代紙』(KADOKAWA)表紙

●人気沸騰中のコロリアージュ
 コロリアージュというと、テレビやラジオで聞いた事がある人もいらっしゃるのではないでしょうか?コロリアージュとはフランス発の「大人向け塗り絵」のこと。図案が非常に緻密なのが特徴で、可愛らしい絵柄とストレス解消の効果から日本でも幅広い年齢の女性に人気が出ています。とある有名書店では特設コーナーまで組まれ、本と合わせて色鉛筆も売れているとか。そうそう、あのフィギュアスケートの浅田真央選手もはまっているそうですよ。
 「大人向け塗り絵」と銘打つだけあって、難易度は非常に高いです。しかしだからこそ完成した時の達成感、満足度は格別。色鉛筆と合わせて贈り物にも最適なのがこのコロリアージュです。

 この度刊行された『コロリアージュ ジャパン いせ辰 千代紙』は、その日本版ともいえる内容。今までのコロリアージュ本はヨーロッパの絵本テイストなものが主流でしたが、この本はガラリと趣向を変え、和風柄に統一されているのが大きな特徴です。
『コロリアージュ ジャパン いせ辰 千代紙』(KADOKAWA)大花車
『コロリアージュ ジャパン いせ辰 千代紙』(KADOKAWA)百花園
 江戸創業の老舗、いせ辰が産み出し伝えてきた豪華絢爛な千代紙(版木で模様が摺られた和紙)から、厳選した模様がコロリアージュの図案として採用されています。絵柄は桜や鶴などの花鳥風月、あるいは歌舞伎や花見といった江戸の細やかな日常を描いたものとなっています。
『コロリアージュ ジャパン いせ辰 千代紙』(KADOKAWA)大吉百福

●江戸千代紙の雰囲気を再現
 今回ウエイドでは、江戸千代紙の模様を元にして塗り絵の図案を制作いたしました。単にトレースして模様をなぞっただけではありません。
 もともと千代紙は手作業で制作されており、細かな色のズレなどが存在します。また塗り絵として描かれているわけではありませんから、所々線が繋がっていなかったりで、そのままでは塗り絵として成立しません。線を整理して色別の面を区切るなど、細かなアレンジを加えていきました。たとえ色を塗っていなくとも作品として成立するのがこのコロリアージュ。要求されるクオリティも高いもので、なかなか骨のある作業となりました。

 できるだけ効率的な作業を意識しつつも、いせ辰の江戸千代紙ならではの手作りの温かみが失われないようにというのが今回のお仕事の重要なところ。一見同じパターンの単純な繰り返しに見えて、細部にまで気が配られております。
『コロリアージュ ジャパン いせ辰 千代紙』(KADOKAWA)獅子牡丹の文韋

 さて今回実際に制作してみて、この複雑な模様を木版手摺りで作り上げた江戸の職人の技量や根気に大いに感銘を受けました。今のようにコピー&ペーストの気軽にできない時代、単純な繰り返し模様でさえ、100個の模様があれば100個を手作業で描き、彫っていたこと、さらに失敗したら1からやり直しで「1つ戻る」とはできないことを考えると、1つの作品が仕上がるまでの作業量とプレッシャーは大変なものだったことでしょう。
 また人物が描かれているものは、一つ一つの仕草が特徴をとらえていて、感情まで伝わってくるようです。季節の行事や楽しみを細やかに描いて楽しんでいた江戸時代は、物質的に豊かなだけでなく、文化的にも充実していたことが感じられます。
 本書をお手に取った際は、そんな江戸文化の豊かさにも思いを馳せてみては如何でしょう。

コロリアージュ ジャパン いせ辰 千代紙』は本日、11月18日発売です。
完成した作品にハッシュタグ「‪#‎KADOKAWAコロリアージュ‬」をつけてインスタグラムに投稿すると、優秀作品にプレゼントが当たるキャンペーンも2016年3月31日まで実施中。
 書店でお見かけの際は何卒よろしくお願い致します。